研究


造血幹細胞移植は、造血器腫瘍や難治性血液疾患に対する根治的治療法のひとつである。移植の成績を左右するのはGVHDを含めた移植後の合併症であり、その対策は極めて重要である。当科、野村教授は、造血幹細胞移植後の合併症を示すキーワードとして、サイト(SIGHT)の標榜を提唱している。これは移植後の合併症の頭文字であり、SOS (類洞閉塞症候群、別名VOD)、Infection (感染症)、GVHD (移植片対宿主病)、HPS (血球貪食症候群)、TMA (血栓性微小血管障害症)で、SIGHT(サイト)となる。サイトの中でもSOSとTMAは止血凝固系の異常が主体であり、その病態には高サイトカイン状態が深く関わっている。本邦から世界に先駆けて薬剤化されたリコンビナント・トロンボモジュリン(rTM)は、DICに対する新しい治療薬として注目されているが、野村教授は、rTMがSOSとTMAに対する治療あるいは予防法としても効果を示す可能性を指摘している。そしてこの効果に関して、当科主催によりサイト研究会を発足させ、臨床的ならびに基礎的なレベルで研究を行い、これら移植後の合併症に関する包括的な討論の場としている。さらに、当科が注目するこのTMは、近年、この線溶作用以外に抗炎症作用を持つことも示されている。しかしながら、その作用機序は不明である。この点に関しても我々は、TMの抗炎症作用を、上記のDCの側面から研究を行っており、基礎的なレベルでの知見も集積しつつある。